これは、血統書付きにしておデブでニューハーフでお気楽天然ボケな、とある猫の半生です。
その猫が我が家の近所に現れたのは、ある年のお盆のころでした。
まず隣に住む伯母宅の前で鳴きわめき、当時は猫が大の苦手だった伯母に追い払われて、我が家の車庫にやって来たようです。
家のものが「なんだか耳のでっかい変な猫がいる」と大騒ぎするので覗いてみると、日本で超大人気のとある品種の子猫でした。
その品種は模様が独特で、子猫だから当然耳が相対的に大きいわけでして。
この品種が野良とは考えられず、首輪も付けているので、どこかの飼い猫が迷ってきたに違いないということになりました。
我が家ではその前にも、迷い猫を保護したことがあるので、きっと飼い主が探しているだろうと保護することにしました。
子猫を預かっておく場所の提供を申し出たのは、伯母と違って最初から動物好きの義伯父でした。
早速、餌を買いに走り、物置小屋に寝床とトイレを用意してくれました。
やがて元の飼い主が現れたのですが、その言葉は意外なものでした。
この子猫は元々、そのお宅のお孫さんが飼い始めたものの、事情があって祖父母の家に引き取られることになったこと。祖父母宅には先住猫がいて折り合いが会わず、先住猫はハンストまでしていること。だからそのお宅ではもうその子猫を飼いたくないと。
それを聞いて、猫嫌いなはずの伯母が思わず答えました。「うちで飼います」
かくしてその子猫は晴れて伯母宅の一員となったのでした。