それは私がまだ学生のころでした。
ある日のこと、朝からどうも体調が優れず、少しふらついて微熱っぽいので体温を測ってみると、確かに熱がありました。それも私にしては珍しく高熱気味で。
季節の変わり目ということもあり、いつもの風邪だろうから丸一日大人しくしていれば治るだろうと、研究室に連絡してその日は休むことにしました。
ところが次の日になっても、珍しく熱が引きません。
起き上がれないこともないのですが、起きているとどうしてもふらふらします。
熱が引かないまま数日休み続け、いくら何でもこれはおかしいと思い、近所の医院へふらふらしながら歩いていきました。
医師に症状を説明し、血液検査をしたところ何と、白血球の一種である好中球が激減しており、それこそ「制癌剤投与中止の目安1歩手前」の値を示したのです。
おそらく、風邪のウイルスみたいなものに感染したはいいが、たまたまそいつのタチが悪かったのではないか、そして既にウイルスはいなくなって、今はウイルス感染のあとに来る白血球減少の期間なのだろう、というのが医師の判断でした。
そのまま医師から「免疫が落ちてるので細菌感染を防ぐため1週間外出禁止」を喰らいました。
その時言われたのが、「この状態でどうして起き上がれるか不思議だ」
あのお、不思議だと言われましても、ふらつきながらも私ゃ現に起きてここまで歩いてきたんですけど?
その後1週間、病状は順調に回復し、無事に復帰しました。
ウチの助教授は、今、共著で教科書の執筆中です。
とにかく大変そうです。
ただでさえ、普段の講義の準備で忙しいというのに、結果的に仕事が激増して締め切りに追われてます。
担当項目の内容を、一体どこまで詳しく書かなければならないのか、他の著者との兼ね合いも絡んで頭を悩ますところです。
そして文章はもとより、図がまた一段と大変らしいです。
元々、こちらに話しかけているような独り言を言う人ですが、最近は独り言と相談と愚痴が渾然一体になったような会話が続いてます。
・・・将来、自分は教科書を書きたくないな、としみじみと思います。