ゴーストライター by フラスコ先生
私の周りの私が直接知っている範囲では、M論にしろD論にしろ、必ず本人が実験した範囲内でまずは本人がなにがしかの文章を書き、あとは原形を留めないぐらい修正されまくり(苦笑)ってのが基本でしたので、幸いなことに実験段階の始めから完全ゴーストライターのようなそんな極端なものはありませんでした。
まあただ、そこまではないにしても、私が学部生時代に目撃したことがあります。
そのM課程の先輩は、後輩に対する面倒見がよく、人間的に本当にいい人でした。
ただ、研究に関しては、性格的なものとか、不可抗力的なこととか、立ち位置とか、まあ色々ゴニョゴニョありまして、お世辞にも実験バリバリって人ではありませんでした。
要は、悪い人じゃないけれど実験の絶対量が完全に不足していたわけです。
当然ながら、後輩には慕われますが、もっと上の先輩にとっては下に示しがつかない存在であり、先生達にとっては悩みの種というわけです。
ま、データの出やすいテーマだったのが幸いし、先輩には本当に最低限ギリギリのデータだけはありました。
あとはこれを何とかそれらしい形にすればいいわけです。
ただ、M論を書く段階で、期限が迫る圧力に耐えきれなくなった本人が途中で完全にパニックを起こしてしまい、ある段階から、次に何からどう手を付けていいか分からなくなってしまいました。
いや、もう書くべきことは決まっているんですが、間に合わない(かもしれない)というプレッシャーに負けてしまったようです。
なんでか知りませんが、ウチの研究室は、M論は提出期限にギリギリ間に合うかどうかぐらいからしか取りかからないという伝統(?)があって、皆さん最後の最後で怒濤の集中力で追い込んで仕上げるってゆー力技でなんとか乗りきってきてたんですが、その先輩は最後まで追い込みがが続かなかったようで。
人間、自分のキャパを超えて追いつめられて完全お手上げ状態になると、本当に身動きが取れない状態で時間だけが過ぎていくんだな、というのが、傍に居るこちらが辛くなるほどよく分かりました。
仕方がないので、指導教官の指導のもと、Dの先輩と私とが手伝って、提出期限の前夜に手分けして代筆しました。
ちなみに、私は当時、卒研生でした。
そんなこんなで、その先輩は何とか無事に卒業していきました。
そんな先輩も、今では、小さいながらも一国一城の主といいますか、立派に独立して御健勝であらせられます。
さて、院に進学した私は、その先輩の土壇場でのあまりのパニックぶりに、こりゃあ早目にデータ整理だけでもやっておいて書けるトコから書いておかないと大変な目に遭うな、と、すぐにパソを買ってM1の夏から(いくらなんでも早っ)書き溜めてました。
で結局、M論提出期限の1ヶ月前には大体出来上がっていて、恩師からビックリされました(苦笑
とはいえ、私の卒業後、後輩達は、昔のように期限ギリギリになってから取りかかったそうで、わが研究室の「伝統」は私で途絶えることなく結局受け継がれたのでした(爆