お引っ越し by フラスコ先生
私が、自分一人分だけの鍵のかかる居室を職場に持ってから、心掛けていることがあります。
部屋の戸をできるだけ開けて、引きこもらないこと。
たとえ、学生がずかずかと、自分の頭で全く考えない丸投げな質問を持ち込んで、私の仕事を邪魔してきたとしても(苦笑
私が学生の頃、当時の研究室のサブボスは、一人部屋の「居室」を持っていました。
実は、当時の私の母校では、一人部屋状態の居室を持っているのはボスだけ、という、建物の構造上の部屋割になっていまして、ほかの研究室のサブボスも下っ端先生もみなさん、学生と同じ大部屋実験室内にデスクを置いていました。
で、何ゆえに、私が所属した研究室のサブボスだけは「居室」を持っていたかと言うと、そこは本当は居室ではなかったのです。
サブボスはなんと、実験装置とか棚とかの配置と、パーティションを駆使して、本来は大部屋の一部に過ぎない場所を「独立した小部屋」に仕立て上げていたのでした。
ご丁寧にも、いい具合に鍵のかかるドアを一つ占有までしています。
OBによると、ある日気がつくと、いつの間にか自力で「部屋」を作り上げていたんだとか。
そしてサブボスは、年々、その「居室」にこもりがちになり、当然ながら自身の研究活動も学生指導も放棄し・・・そのあとは、ええもう、皆様の予想の範囲内です。
大学という、ヒトがひっきりなしに行き交う場所でさえも、自ら部屋にこもって外界との接触を断つと最後はああなる、それが、今の私への反面教師になっています。
件の先生も、学生に引っ越しの手伝いを頼まないところまで来ているとは、完全に前兆が出ておられるようですな。
学生にとっては迷惑千万でしょうが、せめて、雑談のために学生を呼ぶぐらいの勢いで、今後とも外界との最低限の接触を保たれることをお勧めしておきます。